
当社は、気候変動対応を重要な経営課題の一つとして認識しており、2021年7月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」※の提言に賛同いたしました。気候変動が当社の事業に与えるリスクと機会を分析して経営戦略・リスクマネジメントに反映するとともに、その進捗を適切に開示し、社会全体の脱炭素化に貢献しながら、さらなる成長を目指してまいります。
なお、TCFDの提言に基づき、気候変動に対する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」について、以下に開示いたします。
- ※TCFDとは、「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略称で、G20の要請を受け金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び気候変動への金融機関の対応を検討するために設立されました。2017年6月に、気候変動の影響を金融機関や企業等の財務報告において開示することを求める提言を公表しています。
ガバナンス
なかでも気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略や財務計画に大きな影響を及ぼすものと認識し、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、2022年6月にサステナビリティ推進委員会を設置しました。
サステナビリティ推進委員会では、気候変動を主要テーマの一つとし、TCFD提言に則した情報開示項目の整理とGHG排出量の見える化、対応方法およびサステナビリティ対応方針の策定等を行うとともに、目標や施策の進捗情報を議論し、取締役会に報告を行います。
また、取締役会においてはその監督体制として、委員会で審議したサステナビリティに関する課題と目標、対応について適宜報告を受け、必要に応じて審議のうえ、決議します。
戦略
【シナリオ分析】
当社は、台風・豪雨の激甚化等の気候災害の拡大及び脱炭素化等の気候変動緩和に向けた全世界的な取り組みが経営とビジネス全体に重大な影響を与える重要課題であると認識しています。気候変動が当企業グループに与えるリスク及び機会とそのインパクトの把握及び2030年時点の世界を想定した当企業グループの戦略のレジリエ ンスと追加施策の必要性を検討するため、シナリオ分析を実施しました。
その結果、消費者のライフスタイルの変化への追随、気候変動への緩和や適応への対応、炭素税や省エネルギーに関する法規制の強化への対応が焦点となる課題であることが判明しました。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照のうえ、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した「1.5℃/2℃シナリオ」、及び現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した「4℃シナリオ」の2つの世界を想定しています。
気候変動関連の規制の強化や市場の変化・消費者の嗜好等の移行リスクが顕在化する「1.5℃/2℃シナリオ」にはIEA NZE 2050を、自然災害等の物理リスクが顕在化する「4℃シナリオ」にはIPCCによるSSP5-8.5とRCP8.5を選定しました。なお、1.5℃と2℃のシナリオにおいては、リスク及び機会の傾向は同じですが、1.5℃の方が2℃よりも気候変動への対応スピード及び活動レベルを強化していく必要性があると認識しております。
シナリオ分析の対象範囲は、2030年の世界を想定して、特に気候変動の影響を受ける可能性のある家電、リフォーム、物流事業に関連するグループ会社8社のサプライチェーン全体といたしました。
また、気候変動の影響は長い時間をかけて顕在化していく可能性があることを踏まえ、短期、中期、長期の時間軸を定義しております。
この2つのシナリオを踏まえ、TCFD提言に沿って、気候関連リスク及び機会を抽出しました。そのうえで、気候変動がもたらす移行リスク(政策・法規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、機会(製品及びサービス)を特定いたしました。
参照シナリオ |
1.5/2℃シナリオ:IEA NZE 2050 |
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対象事業範囲 | 家電、リフォーム、物流事業に関連するグループ会社8社 |
対象年 | 2030年時点の影響 |
時間軸 |
気候変動の影響は長い時間をかけて顕在化していく可能性があることを踏まえ、短期・中長期の時間軸を次のとおり定義しています。 ・短期 : 現在 ~ 1年 ・中期 : 1年 ~ 5年 ・長期 : 5年 ~ |
【シナリオ分析結果】
シナリオ分析の結果、1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオいずれのケースにおいても、消費者のライフスタイル変化への追随に失敗すること、気候変動への緩和や適応への対応の遅れによる評判の低下が当企業グループにとって重大なリスクであることがわかりました。一方で継続的なシナリオ分析を通して他社に先んじて1.5℃/2℃及び4℃の世界のいずれにも迅速に対応できる事業戦略を構築することにより、リスクを機会に転じさせることもできると考えております。
例えば、1.5℃/2℃シナリオにおいては、炭素税や省エネルギー化に関連する規制強化が想定されているため、当企業グループにとってはコスト増加に繋がります。2030年時点において、最も財務に影響を与えるリスクは炭素税の導入によるコスト増加であり、その影響金額は約17億円と予測しております。
しかしながら、脱炭素に向けて省エネや建築物ZEB化の規制が進行し、温室効果ガス排出量の規制が強化され、それらに伴う社会意識の変化への対応を進めていくなか、エネルギー効率が高く温室効果ガス排出量の低い製品への需要が拡大することは、家電やリフォーム事業を展開する当企業グループにとっては機会でもあると考えております。
また、4℃シナリオにおいては、自然災害が激甚化した結果、被災による被害が発生するとともに、サプライチェーンの分断によって納品が遅延することに伴う販売機会の損失が見込まれます。しかしながら、平均気温が上昇するなかで自社の温度や湿度を一定に保つために空調のエネルギー消費量が増加し、空調コストの増加が見込まれるなか、エネルギー効率の高い空調への需要が拡大することは当企業グループにとっては機会でもあると考えております。
このシナリオ分析を通じて気候関連リスクの影響を認識し対応策を検討することにより、当企業グループの事業上のリスクの低減と価値創出の機会を実現し、持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保することを目指してまいります。
当社の主なリスク・機会は以下のとおりです。
【気候変動によるリスクおよび機会の特定】

リスク管理
当社では、グループ全体に関わるリスク管理の基本方針や管理体制について、リスク管理規程で定めています。その規程に基づいてリスク管理委員会を設置し、グループ会社を取り巻くリスクを総括的に管理しています。
リスク管理委員会では、当企業グループの事業に負の影響を与えるリスクを特定し、そのリスクの影響度合いと発生可能性を評価することで、リスクの重要性の検証を行っています。さらに想定されるリスクに対して、管理目標と具体的な対策を決定し、その進捗状況について継続的にモニタリングを実施しています。リスク管理の状況については、取締役会への報告を行っています。
CO2排出規制などの気候変動に関連するリスクや機会の評価・管理については、サステナビリティ推進委員会で実施しています。全社的な気候変動のリスクと機会を管理し、リスクと機会を特定・評価・管理する手法についても審議、決定のうえ、取締役会に報告しています。識別した気候変動関連リスクは「移行リスク」、「物理リスク」に分類のうえ、リスクと機会の財務的影響を評価し、重要なリスクと機会を特定後にリスク管理委員会と協議を行い、対応策を検討しています。
指標及び目標
当社は、温室効果ガスの排出量を削減する運営を目指し、LED照明などの省エネ設備やクリーンエネルギー設備の導入を進めております。また、省エネ製品・サービスの提供を通じて、その重要性を理解していただく活動など、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを積極的に行っております。
【指標及び目標】
当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3のCO2排出量を指標と定め、温室効果ガス排出量削減目標を設定し、取り組んでおります。2030年度までに当企業グループのCO2排出量を2013年度比46%削減することを目標としており、2022年度のCO2排出量は、2013年度比48%削減を見込んでおります。
【温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)】
当社は、事業活動におけるグループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでおります。当企業グループの2022年度のScope1・2の温室効果ガス排出量は、約90,444t-CO2を見込んでおります。また、2022年度Scope3温室効果ガス排出量は、約33,682t-CO2を見込んでおります。当企業グループのScope1・2のCO2排出量推移は以下のとおりです。Scope3(Scope1・2以外の間接排出)の算定に向けても検討を進めており、順次、開示を進めてまいります。
〈エディオングループ Scope1・2・3温室効果ガス排出量実績及び見通し〉
(単位:t-CO2)
2013年度 | 2021年度 | 2022年度 速報値 | 2022年度-2013年度対比(削減率) | |
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Scope1 | 27,153 | 18,281 | 17,388 | 64%(△36%) |
Scope2 | 148,892 | 78,861 | 73,056 | 49%(△51%) |
Scope3(一部) | 61,780 | 36,976 | 33,682 | 55%(△45%) |
合計 | 237,825 | 134,118 | 124,126 | 52%(△48%) |
※Scope1 自社の直接排出量(ガス、ガソリン、軽油など)
Scope2 他社から供給された間接排出量(電気など)
Scope3 Scope1・2以外の組織活動の上流・下流を含むバリューチェーン上の間接排出(カテゴリー:1・3・5)